認知症高齢者の「受診拒否」という壁
「お父さん、病院に行こう」「いやだ、元気だから大丈夫だ」——。
認知症の高齢者を支える家族にとって、受診を勧めても本人が強く拒否してしまうことは珍しくありません。頭では「診てもらったほうが安心」と分かっていても、拒否が続くと家族は疲れてしまい、「どうすればいいのか分からない」と追い詰められることもあります。
しかし、受診拒否には理由があり、家族が工夫することで改善できる場合もあります。本記事では、認知症高齢者が受診を嫌がる背景や解決のヒント、そして頼れる相談窓口をご紹介します。
なぜ認知症高齢者は受診を嫌がるのか?
認知症の症状は人によって異なりますが、受診を拒む背景には次のような要因があります。
- 不安や恐怖心
病院という場所そのものに「怖い」「行きたくない」と感じてしまうことがあります。待ち時間や検査に対する不安も大きな理由です。 - 記憶や理解の低下
「なぜ病院に行くのか」を忘れてしまい、納得できないまま連れて行かれそうになると抵抗します。 - 自尊心の低下
「病気と思われたくない」「まだ大丈夫だ」という気持ちが、拒否という行動につながることがあります。 - 身体的な疲労や痛み
長い待ち時間や移動の負担がつらくて「行きたくない」と表現する場合もあります。
家族ができる工夫と解決策
では、受診拒否にどう向き合えばいいのでしょうか。大切なのは「無理に連れて行こうとしないこと」です。以下の工夫を試してみてください。
- 言葉のかけ方を工夫する
「病院に行こう」ではなく、「先生に会いに行こう」「体を見てもらって安心しよう」など、本人が受け入れやすい表現に言い換えてみましょう。 - 予定を直前に伝える
前もって伝えると不安が高まる場合もあります。当日の出発直前に「ちょっと出かけようか」と声をかける方がスムーズなこともあります。 - 信頼できる人に同行してもらう
家族よりも孫や友人、ケアマネジャーの方がすんなり受け入れるケースがあります。 - 通院先を選ぶ
認知症に理解のあるクリニックや、待ち時間の少ない外来を選ぶことも効果的です。 - 訪問診療を利用する
医師が自宅まで来てくれる「訪問診療」は、移動の負担を軽減できるため、受診拒否が強い高齢者に適しています。
受診を無理に進めない方がいい場合もある
もちろん、命に関わる急な体調不良があれば緊急受診が必要ですが、慢性的な症状であれば無理やり病院に連れて行かないほうがよい場合もあります。拒否が強まると、かえって本人の不安や混乱を深めるからです。大切なのは「本人に寄り添いながら、安全を守ること」です。
相談できる窓口
一人で抱え込む前に、専門の相談先を利用してみてください。
- かかりつけ医
まずは普段の主治医に相談を。訪問診療や薬の調整など、具体的な提案をしてくれる場合があります。 - 地域包括支援センター
介護や医療の総合的な相談窓口。受診に関するアドバイスや介護サービスの紹介をしてくれます。 - ケアマネジャー
要介護認定を受けている場合は、ケアマネジャーが受診やサービス利用の調整を担ってくれます。 - 認知症疾患医療センター
各地域に設置されており、認知症の専門医療や相談支援を受けられます。
家族が安心できるサポート体制を
認知症高齢者の受診拒否は、多くの家庭で直面する課題です。大切なのは「家族だけで何とかしよう」と思い込まないこと。地域には支援の仕組みが整っており、医療・介護の専門職が一緒に考えてくれます。
私たち大誠会グループでも、病院・介護施設・在宅サービスを通じて「切れ目のない支援体制」を整えています。受診拒否で悩むご家族からのご相談も多く、「訪問診療を利用して安心できた」「デイサービスを利用することで通院がスムーズになった」などのお声をいただいています。
困ったときは、まずは地域包括支援センターや、私たちのような医療・介護サービスを提供する法人にご相談ください。一人で抱え込まず、支えてくれる人とつながることが解決の第一歩です。
まとめ
認知症高齢者の受診拒否は、本人の不安や混乱から生まれる自然な反応です。
「言葉の工夫」「訪問診療の活用」「相談窓口の利用」といった選択肢を知っておくことで、家族の負担は大きく軽減されます。
ご家族が安心して介護を続けられるよう、地域の支援を活用しながら「無理なく、寄り添う形」で受診をサポートしていきましょう。
\ お困りの方はお気軽にお問い合わせください /
医療法人大誠会内田病院 地域医療連携室
TEL)0278-24-5329
内田居宅介護事業所
TEL)0278-23-7535
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